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虫とりの記録

小国

2020/7/17 

山形県の小国町は、飯豊連邦の玄関口として知られる山深い地域だ。

現在でもマタギを生業とする人間がいるくらい自然豊かであり、昆虫では春はギフ、夏はオオクワの採集者で賑わう。

ここ茨城からは、常磐道阿武隈道・東北道を乗り継ぎ約5時間と、如何とも遠いため敬遠していたが、天気との兼ね合いもありこの日しかないタイミングでの遠征となった。

以前、下宿していた仙台から、祖母の家がある新潟市まで、1日かけて自転車で旅したことがある。ちょうど県道113に入り新潟へ抜けようとした時、土砂降りの雨に当たったのが懐かしい。

今回、荒川と並走する車窓を改めて見たが、実に美しいものである。

飯豊山の登山口方面へと車を進めると、まさに日本の古き良き田舎の風景が広がる。

狙いのクロシジミは、この地域の草原・ワラビ畑等に広く生息しているという。

とりあえず、車で流しながら良さげな草地を探すことにした。

ところがである。この長閑な風景に違和感を与える黄色いテープがいたる空き地に貼り巡っている。読むと地主に許可なく立ち入り禁止の文字が記載されている。

流石に採集者の締め出しではないと信じたいが(おそらく山菜採り防止?)、意外にもセンシティブな地域である。マナーと細心の注意を払っての行動が必要との教訓を得て、少し民家から離れた地域を探すことにした。

道中見つけた何の変哲もない空き地の駐車場に車を止め、周辺の草地を覗いてみると、、

なんと早速発見!!

私の採集行には珍しく、こんなにあっさりと見つかっていいのかというレベルである。

吸蜜するクロシジミ。何処にいるかわかりますか?

よく観察すると、ヒメジオンやアザミに似たピンク色の花で大人しく吸蜜していることがわかった。採集は容易い。やや擦れたオスが多く少し時期遅だった。

 

早々に最低限の目的を果たしたため、街へ戻り蕎麦で昼食にする。

 

腹ごしらえをして、当初の目的地だった峠へと車を進める。ところが、峠へと通ずる道が土砂崩れ工事で封鎖。。徒歩だとここから2キロで行けるようだが、諦めて引き返すことに。(この根性なし具合が、素人から抜け出せない所以であろう(笑))

途中、田んぼ脇の草地で探すも1頭のみ確認。他にめぼしい蝶はコキマダラセセリくらいで、この時期にしては淋しい。信州方面と違って副産物が少ないのが難点である。

仕方がないので、一番最初の空き地の生息地へと戻る。周辺の道路沿いの花を探すと、ポツポツと見つかる。

今度は午前中にはいなかったメスばかりだ。オスは縄張り占有の活動時間なのかもしれない。(クロシジミの生態に詳しい方がいたら是非教えていただきたい)

 

こんな感じの草地が広がる

時間も16時、オスメス共に満足いくだけ採れたので、大人しく帰路につくことにした。

 

本種は全国的に見て稀種の部類に入るとはずだが、いる場所には沢山いることがわかった。

昆虫というのは食物連鎖の底辺に位置付けられるからして、環境さえ残っていればいくらでも発生する、という我々採集者が唱える机上の理屈を見事に体現していた。

しかし本地域は過疎化が進んでいるであろうから、やがて草原にヒトの手が加わらなり、やがては消滅してしまう可能性もなくはない。

そう考えると、この地のクロシジミも決して安泰ではないのかもしれない。

毎年来れる場所ではないが、いつかまた訪れてみたいと思う。

 

【採集】

コミマダラセセリ 2 exs.

クロシジミ  20 exs.