My field note

虫とりの記録

ロマンチックなブルーを求めて その1

 

国産ブルーの中でも、L.subsolena は蝶愛好家にとって最も人気の高い種の一つだろう。

この蝶が人気な理由は、様々な雑誌・ブログで紹介されているので割愛するが、大体まとめると、多様な地域変異、色彩の美しさ、そして適度な分布範囲から探索意欲に駆られる、などに集約されるだろう。そして自分もその一人だ。

 

私が学生時代に住んでいた東北地方は本種の分布圏外だったことに加え、移動手段もなく、お金もなく、果てはポイントも知らなかったため、まさに憧れの蝶であった。

社会人になり、長年の悲願を達成すべく自家用車を手に入れ、探索への準備は整った。かに思われた。

しかし本種の希少性・採集圧への影響からか、インターネットを検索してもどこにも具体的な生息場所の情報が得られない。

インターネットで情報収集 → 現地へ行って生息環境を知る → 探索場所を広げる

という私のこれまでの採集セオリーが適用できず、困ったことになった。

そこでとある情報筋から得た、”昆虫関連の情報誌が大量に蔵書されている図書館”に行き、過去の文献情報から生息場所を探ることにした。(これで貴重な晴天の休日を1日犠牲に)

確かにその図書館には、今では手に入れ難い〇〇の標本箱シリーズをはじめ、全国各地の昆虫同行誌が蔵書されており、1日いても飽きることはなかった。

お馴染みのGoogle mapの航空写真と地形図を照らし合わせ、探索範囲を決定し、今度こそ準備は整った。

少し時期が早いかもしれないが、数多いるであろう他の採集者・撮影者とバッティングするのは嫌なので、6月の晴れの平日に年休をとっていざ出発

(次回へ続く)

 

 

青森

2020/8/10

お盆休みに突入し、兼ねてより計画していた青森遠征へ

1日目は福島でムモンアカを探しつつ、盛岡で宿泊

ムモンアカは未だ出会ったことのない蝶で、どういう生態なのか把握していない。

書籍「新・福島の蝶」によると、阿武隈地方では過去にそれなりの個体数が見られたようだ。今でも生息しているかわからないものの、今回は記録のある母畑湖に向かうことにした。

現地に到着したのは14:00頃。うだるような暑さで、何となく雰囲気の良いダム湖沿いの小道を探すことにした。コナラやミズナラの木が多いが、如何せん樹高が高い。

歩きながら、ナラの木を中心に長竿でバシバシ叩きながら探索する。ゼフ系の採集は常に上を見ながらなので、首に負担がかかる(この軟弱者!)

8月ともなると、やはり蝶の種数は少ない。いるのはコミスジやクロヒカゲくらいのものだ。結局、視界にオレンジ色が入ることはなかった。

ムモンアカは夕方になるとホスト木の周りを活発に飛ぶようだが、大量の藪蚊に集られ、探索は1時間半で切り上げである。

 

帰り際、車を止めた小学校脇で、エノキの周りを飛ぶ翅の欠けたオオムラサキと、夏休みの校庭でサッカーをする少年たちを見て、なんだか懐かしい気分になる。

汗だくで一風呂浴びたいところだが、時間が惜しいので車を予約したホテルのある盛岡に車を走らせた。

 

2020/8/11

2日目。

盛岡から下北はまだまだ距離がある。

時間が惜しいので、この日は朝7時にホテルを出発。

東北道で八戸まで行き、下道でさらに北を目指す。そうこうしていると、気温はグングン上がり、本州最北県とは思えない暑さになった。北国の夏は涼しいなどもはや幻想である。

青森は本州で最もゴマシジミを得易い県のはずだ。下北半島は海岸沿いに多数の湖沼が残っており、ゴマの食草であるナガボノシロワレモコウが好む湿地帯が保存されている。

しかしあまりの暑さで、適当な湿地に入って探索する気も起きない。とりあえず、Google mapで調べて目星を付けた場所へ行ってみることにする。

第一のポイントと目論んでいた北東端の岬は、普段は海からの湿った風の影響でぐずついた天候が多いが、今日は晴天に恵まれた。

確認していた湿地帯へ突入する。とにかく沢山いるジャノメチョウとスレたヒョウモン類をスルーしつつ、樹林帯に接する奥の方まで進む。

ここでようやく大きなシジミ蝶がよろよろ飛び出した。難なくゲットすると、綺麗なメスのゴマであった。オオゴマの陽にあたるとギラつくブルーもいいが、ゴマのしっとりした上品なブルーも至高の美しさである。湿地を歩くと、決して多くはないがそこそこに飛び出す。環境に配慮して、10頭採れたら切り上げることにした。しかし、数を決めると中々次が現れない。スレ欠けはリリースしつつ、二時間ほど歩き回ってようやく目標数に達した。

次はマグロで有名な大間まで足を伸ばすことにする。カーナビを見ると、大間まで1時間半もかかる。車の少ない田舎道なので流石に1時間程で着くだろうが、ここで間違いに気づくべきだった。別に大間ラベルが欲しいわけでもないのだから、移動に時間を使わず、環境が良いこの地域周辺を探せばよかった。

事前情報にひきづられて行った大間だが、天気が崩れ今にも雨が降り出しそうなのに加え、ポイントもよくわからず敗退、、

この日はむつ市内の安ホテルをとっている。結局、ゴマも得られずマグロも食べず、大間の地を後にする。一体何をしに来たのやら、、

 

むつ市に近づくにつれて晴れ間が戻ってきた。

しかしもう暑さと運転疲れで探し回る気力もない。

この日はむつ市街の居酒屋で馬刺しと海鮮で一杯やることに。

居酒屋のおばちゃんのサービス品

コロナで客足が去年の半分以下だという。

食べきれないお刺身を無料で頂いてしまったので、たくさん飲んでお店に還元させていただいた。

 

【採集】

ゴマシジミ  10 exs.

 

 

2020/8/12 

3日目。

下北でポイント開拓をして、さらに追加を目指してもよかったのだが、

せっかく青森まで来たということで、津軽半島先端の龍飛岬まで行くことにする。

この海を渡れたらあっという間に津軽半島なのに

津軽へ抜けるには市街地の青森市を抜け、大きく迂回する必要がある。

途中、海沿いの草地でオオモンシロチョウなどを摘んで道草したせいで、ようやく龍飛に着いたのは昼ごはんの時間も過ぎようかという頃であった。

そして、私はここ龍飛のゴマを甘く見ていた。Google mapを見る限り、灯台からさらに続く小道の周辺は草原のような草地が広がっている。下北のようにここの周辺を歩き回ればそれなりに見つかるだろうと考えていたのだ。

ところがどうだ。草地は思いの外丈が高く、とても入って探索できる感じではない。そして何より風が強い。すごい暴風でネットを振れないレベルだ。天気はいいのに何てことだ。

ポイントと睨んだ周辺のコンクリ道を歩き回ること数往復。風のせいで蝶が全く飛ばない。下北にはあれだけいたジャノメチョウでさえ、出てくると嬉しくなる心境だ。ここまで来てnullは流石に堪えるだろう。

そんな私の気持ちを神様がようやく察したのか、何度目かのコンクリロードを歩いていると、大型のシジミ蝶が風に飛ばされて道路に出てきた。これを我ながら見事な反射神経でキャッチした。ネットを覗くと、なんだか黒くて地味なシジミ蝶が入っている。

ところが、裏面の模様はゴマのそれである。どうやらこれが龍飛の特徴を示す黒いゴマシジミのようだ。

龍飛のゴマは海沿いの崖地周辺という特異な生息環境から、周辺の個体群と遺伝的な交流が途絶え、独自の遺伝的な集団を形成している、と何かの記事で読んだ記憶だある。

そのため、ブルーの面積が広がる傾向にある青森産のゴマの中でも、より黒っぽく、翅脈周周辺に花火のように青鱗が出る花火型と呼ばれるタイプが出現する(←あってる?)

採集した個体は、翅こそ破れていないがやや擦れており、何だかあまり綺麗な印象は受けないが、見方によっては渋い蝶と言えなくもない。貴重な黒い青森のゴマということでお持ち帰りした。

 

ようやく一頭目を採集できたが、やはり後が続かない。コンクリロードを諦め、灯台の奥から海岸に続く道を探すが、潮風の影響をまともに受けるので、流石にこんな場所にはいないだろう。。まじで、どこがポイントなのか、素人には難儀な探索である。

 

時間は着々と過ぎてゆき、風が止む気配もない。1頭も追加できない(というか姿も見れない)ので、気持ちも萎える。そろそろ諦めて、車を止めた場所まで戻る。その時、コンクリロード脇の草むらで、久しぶりにブルーのシジミ蝶が飛んだ。

 

ゴマにしては小さいので、ルリシジミだろう。ルリシジミとは言え、龍飛のルリシジミなら悪くない。本当にそのような心境であった。

半ば適当にネットをふり中を覗くと、そこにはルリシジミではない、かといってゴマでもない蝶がいた。頭の蝶図鑑を引っ張り出し、しばし考える。

もしかして、これはカバイロシジミというやつではないだろうか?ゴマに頭がいっぱいで、龍飛がカバイロの産地だということをすっかり忘れていた。しかし、今の蝶がカバイロだと察していたら、興奮して取り逃していたに違いない。そういう意味ではラッキーだ。

最後に思わぬ副産物を得られたことで、この日の探索への意欲はすっかり下火になった。

何とかnullは回避したが、交通の弁を考えると毎年これるような場所ではない。中々寂しい成果と言える。まあ自分の最終行きにはよくあることなので、気にしない。楽しかったので良しとしよう。

 

【採集】

ゴマシジミ  1♂

カバイロシジミ 1♂

 

北アルプス

2020/8/1 

8月になると狙える蝶も限られてくる。

そんなわけで、初のオオゴマチャレンジである。

本来なら、亜高山帯に生息する本種を得るには長い林道歩きや沢登りが必要であるが、ここは車横ずけで観察できる貴重なポイントである。

有名な某ブログでもピンポイントで紹介されており、言うなれば誰でも気軽に来れてしまうため(そう言う私もその一人であるのだが)、10時に到着した時には網を持つ人たちで一杯であった。

廃道となったポイントの林道。所々が崖崩れで崩壊している

とりあえず負けじと林道に入り青いシジミを探すが、一向にそれらしい蝶は見当たらない。それでもヒメキマダラヒカゲやコヒョウモンが常に視界に入るので、飽きることはない。

しばらくすると、網を持った初老の男性とすれ違い、挨拶する。

気さくな方で色々と教えていただいた。

何でもここのオオゴマは食草のカメバヒキオコシ(茎が角ばっているやつ)の生える斜面に蝶道を持つため、経験者は急な斜面で待機しながら採集している。私のように林道を流しても決してオオゴマは採れないだろうと。他にも、ここのポイントで得られるコヒョウモンに特有の変異など etc.

 

そうこうしていると、ここでハプニングが。

何と男性の後ろから大型の青いシジミが飛来して来た。明らかに今まで見たことのあるシジミ蝶と違う気配、、

話途中ではあったが、我慢できずにネットイン。そこにはオオゴマの姿が、、

男性の長年にわたる経験則がほんの数分で逸脱してしまうという事態に、、(笑)

それでも、男性はオオゴマを絞めようとする私に、手製の毒瓶まで貸してくれる心の広い方であった!

男性とお別れし、オオゴマが飛来した周辺で待機することに。

すると崖下から青い蝶が再度飛来!

実は男性の話はあながち外れていなかった。私が待機しているすぐ前が小規模な食草群落の斜面になっており、崖下から林道を経由してオオゴマの蝶道になっていたのだ。

昼飯を食べながらのんびり待機しつつ、結局5頭のオオゴマが三角紙に収まったのである。

オオゴマの雌。自宅で撮影

まさにビギナーズラック採集!

 

【採集】

オオゴマシジミ 5 exs.(A峠)

コヒョウモン 5 exs.(A峠)

コヒョウモンモドキ 2 exs. (乗鞍高原

 

 

 

 

 

 

阿武隈

2020/7/24 

せっかくの4連休だが生憎の天気である。

そこで日中晴れマークが出ていた阿武隈方面へ、来年の為にウラジャノメの生息地を確認しに行った。

今年は本種の観察にそこそこ時間を費やし、生息環境をいくつか見てきたが、中々掴みどころがない。

最初の目的地は、桧山高原にした。

近隣の山々には細々と生息しているので、ここにも生息しているのではないかという魂胆である。

隣のT塚山は、昨年の豪雨で山頂に続く2つの道路が崩壊しており、片方は通行止め地点から山頂まで約3キロ徒歩、もう片方の山道は目的地の寸前で非常にエグい崩落で断念、、

 

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標高約900m地点

ヒルムシロが繁栄する浅い池、周りは草木が茂る湿地、その外側に低木と草原が広がっている。トンボの観察には良いかもしれない。

蝶影は濃く、ヒョウモン類が飛び交っている。

 

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適度に湿っていて、いかにも舞っていそうな環境なのだが…

2時間ほどウロウロしたが、残念ながらウラジャノメはいなかった。

痛んだ個体が多い中、綺麗なヒメシジミの雌2頭、ヤマハンノキに付いていたミドリシジミを少しだけ摘んで、ここを後にした。

 

次に、 帰り途中にある水石山による。

ここは山頂が広い草原になっていて、ヒョウモン類が多く生息している。

内陸の桧山高原よりこっちの方が新鮮個体が沢山いた。海沿い・低標高なのに不思議である。

林縁を散策していると、群生したオカトラノオに、ヒョウモン類が10頭ほど吸蜜に来ていた。全てミドリヒョウモン。同じヒョウモン類でも、こんなに綺麗にニッチを使い分けているのは面白い(写真撮っておけばよかった)

完ピンのウラギンスジ、少し擦れたミヤマカラスシジミを各1頭ずつお持ち帰りした。

 

費やした交通費のわりには成果の乏しい1日だった。それでもこの時期の探索は楽しいものだ。

 

【採集】

ヒメシジミ 2 ♀♀

ミドリシジミ  2♂♂ 1♀

ミヤマカラスシジミ 1 exs.

ウラギンスジヒョウモン 1♀

 

小国

2020/7/17 

山形県の小国町は、飯豊連邦の玄関口として知られる山深い地域だ。

現在でもマタギを生業とする人間がいるくらい自然豊かであり、昆虫では春はギフ、夏はオオクワの採集者で賑わう。

ここ茨城からは、常磐道阿武隈道・東北道を乗り継ぎ約5時間と、如何とも遠いため敬遠していたが、天気との兼ね合いもありこの日しかないタイミングでの遠征となった。

以前、下宿していた仙台から、祖母の家がある新潟市まで、1日かけて自転車で旅したことがある。ちょうど県道113に入り新潟へ抜けようとした時、土砂降りの雨に当たったのが懐かしい。

今回、荒川と並走する車窓を改めて見たが、実に美しいものである。

飯豊山の登山口方面へと車を進めると、まさに日本の古き良き田舎の風景が広がる。

狙いのクロシジミは、この地域の草原・ワラビ畑等に広く生息しているという。

とりあえず、車で流しながら良さげな草地を探すことにした。

ところがである。この長閑な風景に違和感を与える黄色いテープがいたる空き地に貼り巡っている。読むと地主に許可なく立ち入り禁止の文字が記載されている。

流石に採集者の締め出しではないと信じたいが(おそらく山菜採り防止?)、意外にもセンシティブな地域である。マナーと細心の注意を払っての行動が必要との教訓を得て、少し民家から離れた地域を探すことにした。

道中見つけた何の変哲もない空き地の駐車場に車を止め、周辺の草地を覗いてみると、、

なんと早速発見!!

私の採集行には珍しく、こんなにあっさりと見つかっていいのかというレベルである。

吸蜜するクロシジミ。何処にいるかわかりますか?

よく観察すると、ヒメジオンやアザミに似たピンク色の花で大人しく吸蜜していることがわかった。採集は容易い。やや擦れたオスが多く少し時期遅だった。

 

早々に最低限の目的を果たしたため、街へ戻り蕎麦で昼食にする。

 

腹ごしらえをして、当初の目的地だった峠へと車を進める。ところが、峠へと通ずる道が土砂崩れ工事で封鎖。。徒歩だとここから2キロで行けるようだが、諦めて引き返すことに。(この根性なし具合が、素人から抜け出せない所以であろう(笑))

途中、田んぼ脇の草地で探すも1頭のみ確認。他にめぼしい蝶はコキマダラセセリくらいで、この時期にしては淋しい。信州方面と違って副産物が少ないのが難点である。

仕方がないので、一番最初の空き地の生息地へと戻る。周辺の道路沿いの花を探すと、ポツポツと見つかる。

今度は午前中にはいなかったメスばかりだ。オスは縄張り占有の活動時間なのかもしれない。(クロシジミの生態に詳しい方がいたら是非教えていただきたい)

 

こんな感じの草地が広がる

時間も16時、オスメス共に満足いくだけ採れたので、大人しく帰路につくことにした。

 

本種は全国的に見て稀種の部類に入るとはずだが、いる場所には沢山いることがわかった。

昆虫というのは食物連鎖の底辺に位置付けられるからして、環境さえ残っていればいくらでも発生する、という我々採集者が唱える机上の理屈を見事に体現していた。

しかし本地域は過疎化が進んでいるであろうから、やがて草原にヒトの手が加わらなり、やがては消滅してしまう可能性もなくはない。

そう考えると、この地のクロシジミも決して安泰ではないのかもしれない。

毎年来れる場所ではないが、いつかまた訪れてみたいと思う。

 

【採集】

コミマダラセセリ 2 exs.

クロシジミ  20 exs.

 

 

 

 

榛名山

2020/7/12

先週の赤城に続いて榛名山

高崎のビジホで前泊して街で飲み、翌日優雅に7時出発である。

某マンガの影響か、いかした車が何台も後ろに迫るので先に道を譲る。

例のごとくポイントはよくわからないので、着いてからの探索だが、ここ榛名山はいくつかの散策路があり、先週の赤城山よりもわかりやすい。

人が少ない朝の中に、目立つ草原を探索することにした。

草原と森の林縁で早速ウラジャノメを発見したのだが、気配を感付かれて藪の奥へ逃げられてしまった、、

木道を歩くと、羽化したばかりのヒメシジミのオスがわらわらと飛び出す。縁毛の揃ったこの蝶は実に美しい。また、ヒョウモンチョウも活発に活動している。どうやらメスの出始めのようだ。ヒョウモン類はメスの方が重量感があって個人的には好みだ。

カメラを持った年配の方と挨拶をする。十数年間、毎年榛名山の蝶を観察しているという。曰く、ここのヒメシジミは十数年前と比較して大型化している印象があるそうだ。また、自生しているカシワをホストにするハヤシ・ウラジロは近年激減し、ほとんど見られないとも教えてくださった。赤城に引き続き、榛名山でも蝶は衰退の一途を辿っているのだろうか。残念でならない。

気を取り直して森へ移動する。こちらは完全な樹林帯ではなく、空き地空間に草地が点在するいい感じの環境である。

林縁では、数日内に羽化したのであろう、アイノミドリ、ジョウザンミドリの卍飛翔が繰り広げられていた。金緑に輝く点滅はある種の非日常的な空間を作り出しており、しばし見入ってしまった。

ところで肝心のウラジャノメであるが、相変わらずいそうでいない。ついに見つけたのは林縁ではなく、樹林帯の遊歩道で糞で吸汁している個体だった(笑)

採集したのは完ピンの雌個体で、オスは既にスレ欠け個体ばかり。ウラジャはすぐに擦れてしまうので、一回で雌雄同時採集が難しいことを実感したのであった。ところで、ここのメスは後翅の白帯に存在感があり、中々見応えがある(気がする)

赤城と榛名はどうやら標高も同程度であることから、ヒョウモンチョウに続きウラジャノメの発生時期も似通っているようだ。

昼前、あちこちでメスアカの活動が始まる。俊敏なシジミがいてネットすると何とウラゴであった。本当にゼフが多い山である。

13時前までの散策で、結局この日の収穫も5頭ほどで終了。

冷たい蕎麦を食べて、早めに帰路へついた。

 

【採集】

ウラジャノメ 5♀♀

 

赤城山

2020/7/5

蝶の名産地、赤城山

藤岡コレクションには、赤城山近隣のゴマ 、アサマの標本が掲載されている他、さらに以前はコモドキも生息していたという(なんていい時代だろう)。

残念ながら、現在これらの種は草原の衰退と共に見られなくなってしまったようだが?、それでもヒメギフや各種ゼフ、ウラジャノメ等は健在のようだ。

山頂付近まで道路が通っており、登山せずに高原性の蝶類に出会えるのも魅力である。

今回もどこがポイントなのかわからないので、とりあえず歩いて探すことにする。

 

曇天の覚満淵。いかにも蝶が好みそうな草原だが何も飛ばない、、

どうもこのカルデラ湖周辺は雲が流れ込みやすいのか、中々霧が晴れない。

環境的には先日の小田代ヶ原に似ているためいてもおかしくないのだが、やはり日差しがないと厳しいのか。

仕方がないので、湖岸近くの蕎麦屋で昼食にする。注文した天ざるは、これでもかというくらいの山ウドの葉の天ぷらが出てきて大満足であった。

 

食後、一か八か場所を変えることにする。道中通った牧場のあたりが怪しいのでそちらに移動

嬉しいことにこちらは眩しい日差しが差し込んでおり、道端にモンキチョウが飛んでいる。やはり午前のカルデラ湖は窪地になっているため、霧が流れ込みやすかったのだ。

周辺の駐車場に止め散策すると、林縁に怪しいジャノメを発見。目的の蝶をあっさりと発見してしまった。しかし、ひらひらと藪の奥に飛んでしまうため、思ったようにネットできない。見つけたら走って追いかける。年甲斐もなく昆虫少年のようである。それでも、数頭の完ピン個体を採集できたので満足である。おまけに、草むらにいた羽化したてのヒョウモンチョウを数頭お持ち帰りした。

帰り際、売店でソフトクリームを購入し、ふと入り口脇の白い壁を見る。

あんなに探したウラジャノメが翅を休めているではないか、、

真面目に探せばかなりの個体数がいるのではないかと予想したが、この日は満足したので帰路についた。

 

後日、このポイントが蝶研のマップで記載されていた場所とほぼ同じ場所であることを知った。自己開拓ではなくて残念であるが、経験値が上がったということで満足しよう。

 

【採集】

ウラジャノメ 6♂♂

ヒョウモンチョウ  2♂♂