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虫とりの記録

青森

2020/8/10

お盆休みに突入し、兼ねてより計画していた青森遠征へ

1日目は福島でムモンアカを探しつつ、盛岡で宿泊

ムモンアカは未だ出会ったことのない蝶で、どういう生態なのか把握していない。

書籍「新・福島の蝶」によると、阿武隈地方では過去にそれなりの個体数が見られたようだ。今でも生息しているかわからないものの、今回は記録のある母畑湖に向かうことにした。

現地に到着したのは14:00頃。うだるような暑さで、何となく雰囲気の良いダム湖沿いの小道を探すことにした。コナラやミズナラの木が多いが、如何せん樹高が高い。

歩きながら、ナラの木を中心に長竿でバシバシ叩きながら探索する。ゼフ系の採集は常に上を見ながらなので、首に負担がかかる(この軟弱者!)

8月ともなると、やはり蝶の種数は少ない。いるのはコミスジやクロヒカゲくらいのものだ。結局、視界にオレンジ色が入ることはなかった。

ムモンアカは夕方になるとホスト木の周りを活発に飛ぶようだが、大量の藪蚊に集られ、探索は1時間半で切り上げである。

 

帰り際、車を止めた小学校脇で、エノキの周りを飛ぶ翅の欠けたオオムラサキと、夏休みの校庭でサッカーをする少年たちを見て、なんだか懐かしい気分になる。

汗だくで一風呂浴びたいところだが、時間が惜しいので車を予約したホテルのある盛岡に車を走らせた。

 

2020/8/11

2日目。

盛岡から下北はまだまだ距離がある。

時間が惜しいので、この日は朝7時にホテルを出発。

東北道で八戸まで行き、下道でさらに北を目指す。そうこうしていると、気温はグングン上がり、本州最北県とは思えない暑さになった。北国の夏は涼しいなどもはや幻想である。

青森は本州で最もゴマシジミを得易い県のはずだ。下北半島は海岸沿いに多数の湖沼が残っており、ゴマの食草であるナガボノシロワレモコウが好む湿地帯が保存されている。

しかしあまりの暑さで、適当な湿地に入って探索する気も起きない。とりあえず、Google mapで調べて目星を付けた場所へ行ってみることにする。

第一のポイントと目論んでいた北東端の岬は、普段は海からの湿った風の影響でぐずついた天候が多いが、今日は晴天に恵まれた。

確認していた湿地帯へ突入する。とにかく沢山いるジャノメチョウとスレたヒョウモン類をスルーしつつ、樹林帯に接する奥の方まで進む。

ここでようやく大きなシジミ蝶がよろよろ飛び出した。難なくゲットすると、綺麗なメスのゴマであった。オオゴマの陽にあたるとギラつくブルーもいいが、ゴマのしっとりした上品なブルーも至高の美しさである。湿地を歩くと、決して多くはないがそこそこに飛び出す。環境に配慮して、10頭採れたら切り上げることにした。しかし、数を決めると中々次が現れない。スレ欠けはリリースしつつ、二時間ほど歩き回ってようやく目標数に達した。

次はマグロで有名な大間まで足を伸ばすことにする。カーナビを見ると、大間まで1時間半もかかる。車の少ない田舎道なので流石に1時間程で着くだろうが、ここで間違いに気づくべきだった。別に大間ラベルが欲しいわけでもないのだから、移動に時間を使わず、環境が良いこの地域周辺を探せばよかった。

事前情報にひきづられて行った大間だが、天気が崩れ今にも雨が降り出しそうなのに加え、ポイントもよくわからず敗退、、

この日はむつ市内の安ホテルをとっている。結局、ゴマも得られずマグロも食べず、大間の地を後にする。一体何をしに来たのやら、、

 

むつ市に近づくにつれて晴れ間が戻ってきた。

しかしもう暑さと運転疲れで探し回る気力もない。

この日はむつ市街の居酒屋で馬刺しと海鮮で一杯やることに。

居酒屋のおばちゃんのサービス品

コロナで客足が去年の半分以下だという。

食べきれないお刺身を無料で頂いてしまったので、たくさん飲んでお店に還元させていただいた。

 

【採集】

ゴマシジミ  10 exs.

 

 

2020/8/12 

3日目。

下北でポイント開拓をして、さらに追加を目指してもよかったのだが、

せっかく青森まで来たということで、津軽半島先端の龍飛岬まで行くことにする。

この海を渡れたらあっという間に津軽半島なのに

津軽へ抜けるには市街地の青森市を抜け、大きく迂回する必要がある。

途中、海沿いの草地でオオモンシロチョウなどを摘んで道草したせいで、ようやく龍飛に着いたのは昼ごはんの時間も過ぎようかという頃であった。

そして、私はここ龍飛のゴマを甘く見ていた。Google mapを見る限り、灯台からさらに続く小道の周辺は草原のような草地が広がっている。下北のようにここの周辺を歩き回ればそれなりに見つかるだろうと考えていたのだ。

ところがどうだ。草地は思いの外丈が高く、とても入って探索できる感じではない。そして何より風が強い。すごい暴風でネットを振れないレベルだ。天気はいいのに何てことだ。

ポイントと睨んだ周辺のコンクリ道を歩き回ること数往復。風のせいで蝶が全く飛ばない。下北にはあれだけいたジャノメチョウでさえ、出てくると嬉しくなる心境だ。ここまで来てnullは流石に堪えるだろう。

そんな私の気持ちを神様がようやく察したのか、何度目かのコンクリロードを歩いていると、大型のシジミ蝶が風に飛ばされて道路に出てきた。これを我ながら見事な反射神経でキャッチした。ネットを覗くと、なんだか黒くて地味なシジミ蝶が入っている。

ところが、裏面の模様はゴマのそれである。どうやらこれが龍飛の特徴を示す黒いゴマシジミのようだ。

龍飛のゴマは海沿いの崖地周辺という特異な生息環境から、周辺の個体群と遺伝的な交流が途絶え、独自の遺伝的な集団を形成している、と何かの記事で読んだ記憶だある。

そのため、ブルーの面積が広がる傾向にある青森産のゴマの中でも、より黒っぽく、翅脈周周辺に花火のように青鱗が出る花火型と呼ばれるタイプが出現する(←あってる?)

採集した個体は、翅こそ破れていないがやや擦れており、何だかあまり綺麗な印象は受けないが、見方によっては渋い蝶と言えなくもない。貴重な黒い青森のゴマということでお持ち帰りした。

 

ようやく一頭目を採集できたが、やはり後が続かない。コンクリロードを諦め、灯台の奥から海岸に続く道を探すが、潮風の影響をまともに受けるので、流石にこんな場所にはいないだろう。。まじで、どこがポイントなのか、素人には難儀な探索である。

 

時間は着々と過ぎてゆき、風が止む気配もない。1頭も追加できない(というか姿も見れない)ので、気持ちも萎える。そろそろ諦めて、車を止めた場所まで戻る。その時、コンクリロード脇の草むらで、久しぶりにブルーのシジミ蝶が飛んだ。

 

ゴマにしては小さいので、ルリシジミだろう。ルリシジミとは言え、龍飛のルリシジミなら悪くない。本当にそのような心境であった。

半ば適当にネットをふり中を覗くと、そこにはルリシジミではない、かといってゴマでもない蝶がいた。頭の蝶図鑑を引っ張り出し、しばし考える。

もしかして、これはカバイロシジミというやつではないだろうか?ゴマに頭がいっぱいで、龍飛がカバイロの産地だということをすっかり忘れていた。しかし、今の蝶がカバイロだと察していたら、興奮して取り逃していたに違いない。そういう意味ではラッキーだ。

最後に思わぬ副産物を得られたことで、この日の探索への意欲はすっかり下火になった。

何とかnullは回避したが、交通の弁を考えると毎年これるような場所ではない。中々寂しい成果と言える。まあ自分の最終行きにはよくあることなので、気にしない。楽しかったので良しとしよう。

 

【採集】

ゴマシジミ  1♂

カバイロシジミ 1♂